相続対策-生前贈与

昨今、相続税の改正が議論されていますが、改正の法案が通れば相続税の基礎控除が現行の6割に減額され、相続税の課税対象となる人が増えるため、相続対策の必要性も増してくるものと思います。今回は相続対策の一つとして、生前贈与についていくつかのケースの計算例を踏まえて検討してみたいと思います。

1.相続税の計算方法

相続人 配偶者、こども2人(Aさん、Bさん)

第1ステップ:課税価格の算出
 ケース1ケース2ケース3ケース4ケース5
相続財産100,000,000200,000,000300,000,000400,000,000500,000,000
基礎控除(*)80,000,00080,000,00080,000,00080,000,00080,000,000
課税価格20,000,000120,000,000220,000,000320,000,000420,000,000
* 基礎控除=5000万円+1000万円×法定相続人の数
 この場合、相続財産が8000万円までなら相続財産が基礎控除以下となり、相続税はかからない。

第2ステップ:各種控除等前の相続税の総額

法定相続分 配偶者:1/2、子供A:1/4、子供B:1/4

課税価格を法定相続分で按分

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 ケース1ケース2ケース3ケース4ケース5
配偶者10,000,00060,000,000110,000,000160,000,000210,000,000
Aさん5,000,00030,000,00055,000,00080,000,000105,000,000
Bさん5,000,00030,000,00055,000,00080,000,000105,000,000

各人の相続税を計算し、相続税の総額を計算する。
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 ケース1ケース2ケース3ケース4ケース5
配偶者1,000,00011,000,00027,000,00047,000,00067,000,000
Aさん500,0004,000,0009,500,00017,000,00025,000,000
Bさん500,0004,000,0009,500,00017,000,00025,000,000
合計2,000,00019,000,00046,000,00081,000,000117,000,000


 第3ステップ:相続税の総額を各人の財産の取得割合で按分する。

財産の取得割合 配偶者:1/2、Aさん:1/4、Bさん:1/4の場合

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 ケース1ケース2ケース3ケース4ケース5
相続税の総額2,000,00019,000,00046,000,00081,000,000117,000,000
配偶者1,000,0009,500,00023,000,00040,500,00058,500,000
(*税額軽減後)00000
Aさん500,0004,750,00011,500,00020,250,00029,250,000
Bさん500,0004,750,00011,500,00020,250,00029,250,000
合計1,000,0009,500,00023,000,00040,500,00058,500,000
相続財産に対する割合1.0%4.8%7.7%10.1%11.7%
(*)配偶者の相続税については、取得財産のうち(全員の取得財産×法定相続分)までは税額軽減が受けられます。

財産の取得割合 Aさん:1/2、Bさん:1/2の場合
<>
 ケース1ケース2ケース3ケース4ケース5
相続税の総額2,000,00019,000,00046,000,00081,000,000117,000,000
配偶者00000
(*税額軽減後)00000
Aさん1,000,0009,500,00023,000,00040,500,00058,500,000
Bさん1,000,0009,500,00023,000,00040,500,00058,500,000
合計2,000,00019,000,00046,000,00081,000,000117,000,000
相続財産に対する割合2.0%9.5%15.3%20.3%23.4%

(*)配偶者が財産を取得していないと税額軽減は受けらず、全体としての相続税が大きくなります。

 
2.贈与税

贈与税は贈与を受けた人に課せられる税で、年間110万円までが非課税となります。贈与財産と贈与税は下表のとおりです。
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贈与財産贈与税贈与税/贈与財産
1,100,000円まで00.0%
3,000,000円190,0006.3%
5,000,000円530,00010.6%
7,000,000円1,120,00016.0%
10,000,000円2,310,00023.1%

3.生前贈与


相続税の計算方法のところでわかるように相続財産が小さければ相続税の税率も低いのですが、相続財産が億単位であれば相続財産が大きくなればなるほど税率も高くなります。(最高50%)
このような場合には、生前贈与をしておけば毎年1人につき110万円までなら非課税枠が使えて、贈与税を払わずに相続財産を減らすことができ、相続税を軽減できます。また、相続財産が大きく相続税で高い税率の適用が想定される場合は、相続税より比較的低額な税率で済む贈与を定期的に行うことにより、結果として贈与税、相続税トータルとしての税負担を軽くなります。
 以上のように、相続税がかかると想定される場合は、相続財産、相続人の状況などを踏まえて、適切な金額の生前贈与を計画的に行うことにより、税負担を軽減することができます。

 (参考)
相続税の税率
贈与税の税率
改正案(基礎控除の見直し、税率改定など)



※平成27年1月以降の相続、贈与については、基礎控除、税率が変更されます。

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退職金対策と生命保険の活用

中小企業の経営者の方にとって、ご自身の退職金の金額をどうすればよいかは大きな問題のひとつだと思います。退職金の設定について、税制面、保険の活用の面から考えてみたいと思います。

1.退職金と所得税
退職に伴い退職金を取得した場合は、退職所得として所得税が課せられます。
ただし、非課税枠(退職所得控除額)がありますのでその範囲内であれば所得税がかからず、非課税枠を超える場合は、退職所得に対して所得税が課せられます。
したがって、税制面からいえば、この非課税枠の金額が退職金の金額を設定する際のひとつの目安になります。

[退職所得]
(退職金-退職所得控除額)×1/2



[退職所得控除額]

勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数
勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)


例.勤続年数10年の場合 40万円×10年=400万円
  勤続年数30年の場合 800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円


2.生命保険の活用

退職金を支払うためには、そのための資金を用意する必要があります。資金を計画的にための手段として生命保険があります。その中でも有効と考えられるのが100歳満期(99歳満期)定期保険です。
定期保険というと、いわゆる掛捨てタイプで、解約しても解約返戻金が戻らないイメージがあると思いますが、定期保険でも保険期間が長いものになると解約返戻金が出ます。
また、下図のように解約返戻金の額は保険期間中の一定のところでピークがあり、その後減少していきます。100歳満期定期保険の場合、保険料は割高ですが、ピークのところでは払い込んだ保険料の累計額とほぼ同額の解約返戻金を受け取ることができます。つまり、定期保険としての万が一のための保障機能と、貯蓄機能を合わせ持った保険といえるでしょう。

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想定される退職の時期と解約返戻金がピークを迎える時期を合わせるように契約しておき、実際に退職する年に保険を解約し解約返戻金を受け取ることで、退職金の資金をねん出できます。また、受け取った保険金は雑収入などとしてその年の利益になりますが、支払った退職金が経費となるため、保険金を受け取った年にその分を退職金として支払っておけば、保険金に対して法人税が課税されることもありません。

さらに、100歳満期定期保険は節税の効果もあります。税務上、100歳満期定期保険は長期平準定期保険(*)に該当し、支払う保険料の1/2を損金に算入(所得から減算)できます。(残り1/2は保険積立金などとして資産計上。)毎年利益がでている会社であれば、損金に算入した金額だけ毎年の所得を減らすことができるので、その分節税できることになります。

*長期平準定期保険・・・保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、加入時の年齢+保険期間×2>105

*損金にするための要件-契約者:法人、被保険者:役員、従業員、保険金受取人:法人

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平成25年 相続税・贈与税の改正

平成25年の税制改正により平成27年1月1日以後の相続税、贈与税が改正されます。
 相続税については基礎控除の引き下げおよび高額な部分の税率引き上げにより増税となります。逆に贈与税については20歳以上の直系尊属(子孫)への贈与とそれ以外の贈与の税率を区分し、20歳以上の直系尊属への贈与の低額な部分の税率が引き下げられます。また、相続時精算課税制度の対象拡大、教育資金の贈与税の非課税の新設が実施されます。
 全体的な内容としては相続税は増税、贈与税は減税となっており、高齢者の保有資産を若年層に早期に移転し経済を活性化させる狙いがあるものと思いますが、これにより相続税の課税対象者は大幅に増加する見込みで、早期に相続対策を検討することが今まで以上に重要となります。
 主な改正点は以下の通りです。

1.相続税


(1) 基礎控除の引き下げ

   現行  5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
   改定後 3,000万円+600万円×法定相続人の数
 
 相続税の基礎控除は現行の6割となり、例えば相続人が3人の場合、現行の8,000万円が改定後は4,800万円となります。今回の改正で一番影響が大きいものと思われます。

(2) 税率の見直し

税率が以下の通り改正されます。
1億円超の区分が細分化され、6億円超の区分で55%の税率が新設されており、高額な相続財産について増税となります。

基礎控除後の 課税価格現行改正後
20歳以上の直系尊属左記以外
税率控除額税率控除額税率控除額
~200万円10%10%10%
~300万円15%10万円15%10万円15%10万円
~400万円20%25万円15%10万円20%25万円
~600万円30%65万円20%30万円30%65万円
~1,000万円40%125万円30%90万円40%125万円
~1,500万円50%225万円40%190万円45%175万円
~3,000万円45%265万円50%250万円
~4,500万円50%415万円55%400万円
4,500万円超55%640万円
(青字は減税、赤字は増税)

(3) 未成年者控除・障害者控除

未成年者、障害者については、以下の通り、控除額が拡大されます。

<未成年者控除>
現行   6万円×20歳に達するまでの年数
改定後  10万円×20歳に達するまでの年数

<障害者控除>
現行   6万円(特別障害者は12万円)×85歳に達するまでの年数
改定後  10万円(特別障害者は20万円)×85歳に達するまでの年数

(4) 小規模宅地等の特例
   居住用宅地の対象面積の上限が240平米から330平米に拡大されます。


2.贈与税

(1) 税率構造の見直し

受贈者が20歳以下の直系尊属の場合、現行よりも低額部分について減税になります。

(例)
 贈与財産が500万円の場合
 基礎控除後の課税価格=500万円-110万円=390万円
  現行  390万円×20%-25万円=53万円
  改正後 390万円×15%-10万円=48.5万円
 
 贈与財産が1,000万円の場合
 基礎控除後の課税価格=1,000万円-110万円=890万円
  現行  890万円×40%-125万円=231万円
  改正後 890万円×30%-90万円=177万円
 

基礎控除後の 課税価格現行改正後
20歳以上の直系尊属左記以外
税率控除額税率控除額税率控除額
~200万円10%10%10%
~300万円15%10万円15%10万円15%10万円
~400万円20%25万円15%10万円20%25万円
~600万円30%65万円20%30万円30%65万円
~1,000万円40%125万円30%90万円40%125万円
~1,500万円50%225万円40%190万円45%175万円
~3,000万円45%265万円50%250万円
~4,500万円50%415万円55%400万円
4,500万円超55%640万円
(青字は減税、赤字は増税)



(2) 相続時精算課税制度の見直し
 

 相続時精算課税制度の対象者が拡大され、現行よりも利用しやすくなります。

 <現行>
  受贈者:20歳以上の推定相続人、贈与者65歳以上の者
 <改正後>
  受贈者:20歳以上の推定相続人および孫、贈与者60歳以上の者

(3) 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置  

 子や孫に対する教育資金の贈与について1500万円(学校以外に支払われるものは500万円)までが非課税となる措置が新設されます。非課税の適用を受ける場合、金融機関に子や孫名義の口座を開設し教育資金を一括して拠出し、当該口座から払い出される学校などへの入学金や授業料などが非課税の対象となります。また、子や孫が30歳になった時点で使い残しがある場合は、その部分は贈与税の課税対象となるので注意が必要です。



(参考ページ)

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